手を動かして感じること(箱庭療法へのお誘い)
「なんで箱庭を入れたんですか?」と言われることがあります。
心理士の間でも「箱庭なんてもう時代遅れ」という風に語られることがあります(いえいえ、関西方面ではかなり普及しているそうです)。
前の職場の上司(別の学派の方でした)にも、そう言われましたっけ。
以前は教育研究所(教育委員会の相談室)にはプレイルームがあって、そこに箱庭があるところも沢山あったようです。学会での報告でも、箱庭の出てくるケースはかなりありました。
でも、最近はあまり聞きません。
多分、教育相談の態勢が変わったからなのでしょう。そういう風に時間をかけて向き合うよりも、効率を優先したのでしょうか?
じゃあ、もう時代遅れなのか?というと、そうでもないと思います。
こころの世界では効率が全てではないのです。
私は描画も使いますが、描画には少なからず抵抗を示される方がいらっしゃいます。
「あまり絵を描いたことがないから」というのがその理由です(だからこそ、描画が良いと私は考えているのですが、それはまた別の機会に…)。
箱庭は経験の有無を問いません。心理療法を初めて受ける方でしたら、誰にとっても新しい体験です。
そして、同時に子どものころ砂遊びをしたことのある人でしたら、懐かしい体験になる可能性もあります。
まずは砂に触ってみてください。
砂に触ることに抵抗があるのでしたら、棚をながめて、アイテムを手にとってみてください。
置くことに抵抗があるのでしたら、そのアイテムについて話をしてくださってもいいです。
もし何か作りたい気持ちになりましたら、ご自由にどうぞ。
なにか必要がありましたら、お手伝いします。
自分で作りたいものが作れたら、その「感じ」を大切にしてほしいと思います。
時間内に作り終わらなくてもいいのです。
思うようなものができなくても、それはそれで意味のあることだと思います。
砂に触れて、アイテムを見て、あなたのこころが動くことが大切なのです。
ですから、気持ちが乗らなければ、それはそれで良いのです。無理はしないこと。
よく、作品を作ったあとに「これで何かわかりますか?」と尋ねられることがあります。
「先生、診断を」と言われたことも。そういう気持ちも沸きおこることがあるでしょう。
でももっと大切なのは、つくる作業のなかで動いたこころのありようなのだと思います。
それをつくった方と見守り手の私とで共有できるといい、と思っています。